ミヤコカナヘビのページ

 

当研究室では、ミヤコカナヘビの目撃情報を募集しています。興味のある方は、下記をご覧下さい。

問い合せ先は、電話:0980-77-4947(宮古島市教育委員会)メール:miyakokanahebi(a)gmail.com(戸田&才木)まで。

 

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ミヤコカナヘビはこれまでも宮古島市の条例によって採集が禁止されていましたが,2016年3月から「種の保存法」の対象種となり,現在では,国の法律によっても捕獲・採集や譲渡・販売などが厳しく規制されています.

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【ミヤコカナヘビってなに? 】

ミヤコカナヘビは宮古島と周辺の離島に固有のトカゲで,1996年に新種 Takydromus toyamai として名前が付けられました.学名のtoyamai は,宮古諸島の爬虫類研究の発展に多大な貢献をしてこられた当山昌直氏に由来します.それ以前から宮古にカナヘビがいることは知られていましたが,それは沖縄や奄美に生息するアオカナヘビと混同されていました.つまり,この2種はそれだけよく似ていたのです.

ミヤコカナヘビがアオカナヘビと異なるのは,おなかの鱗の列が8列あること(アオカナヘビでは6列),体の側面が一様に緑色ないし黄緑色をしていること(アオカナヘビでは白い線がある)などです.

 

【近縁種との関係】

2000年代の初頭に,DNAの情報を使ってカナヘビ類の類縁関係が調査されました.その結果は予想外のものでした.ミヤコカナヘビは,姿がよく似たアオカナヘビや,地理的に隣接した八重山諸島のサキシマカナヘビとではなく,台湾や中国大陸にいる種に近縁だったのです.なぜ,宮古諸島に系統が異なるカナヘビがいるのか,宮古諸島の島としての成立の歴史を研究するうえでも重要なヒントが隠されていそうですが,今のところよく分かっていません.

ミヤコカナヘビと最も近縁なのは台湾のスタイネガ-カナヘビあるいは中国大陸のキタカナヘビです.これらの種の体色は主として薄い茶色で,オスでは体側が黄緑色になります.一方,アオカナヘビ,サキシマカナヘビに近縁なのは台湾のザウテルカナヘビという種で,こちらは全身緑色です.つまり,琉球列島のカナヘビ3種のなかでミヤコカナヘビだけが由来が異なる薄茶色の祖先から進化したというわけです.このように,ミヤコカナヘビは,宮古諸島の動物相の成り立ちや島の成因を考える上で学術的に高い価値を有するだけでなく,トカゲにおける体色の進化の過程を知るうえでも貴重な存在ということができます. 

 

【ミヤコカナヘビの生活史 】

ミヤコカナヘビの生態に関する詳しい研究はなされていません.現在までにおおよそ次のようなことが分かっています.

<繁殖>

 ・交尾期:少なくとも春季を含む時期.

 ・産卵:メスは春から夏にかけて複数回産卵します.1度に2-3個の卵を産みます.

 ・卵:卵は1ヶ月ほどで孵化します.

 ・孵化:生まれたての子どもは頭胴長2.5 cm,尾長5.7 cm 程です.

 ・成熟:産まれた子どもは翌年には成熟し,繁殖を始めると考えられています.

<生活>

 ・多くの昼行性のトカゲ類と同じように日光浴による体温調節をします.

 

【絶滅危惧種ミヤコカナヘビ 】

ミヤコカナヘビは,かつてはちょっとした草むらで普通に見られたそうです.ところが,ここ20~30年の間に大幅に数を減らし, 2014年発行の環境省版レッドデータブック(日本の絶滅のおそれのある野生生物をまとめた本)では,最も絶滅の危険性の高いカテゴリーである「絶滅危惧IA類」にリストされています.絶滅危惧IA類の爬虫類は全国でも4種しかなく,ミヤコカナヘビはその一種ということになります

ミヤコカナヘビは宮古諸島に固有ですが,それでも絶滅危惧IA類の他の3種に比べれば分布範囲も広く,生息環境も本来ありふれているはずの「草むら」です.それでも数が減り,種の存続が危ぶまれる状態に陥っています.深山の森林に棲む生き物だけでなく,我々と隣り合わせに暮らすこのような小動物に,今,何かが起きています.

 

【ミヤコカナヘビ減少の理由は?】

ミヤコカナヘビの個体数減少の理由として次のようなことが考えられています.

1)生息地の消失

 これが個体数減少の一因であることは確実です.私たちが本格的にミヤコカナヘビを調査するようになったここ数年の間にも,実際につぶれてしまった生息地があります.とはいえ,生息地の消失が,全体としてどの程度の規模・速度で進行し,どれくらい種を圧迫しているかは分かっていません.

2)捕食性外来種の影響

 島に持ち込まれ繁殖しているイタチやクジャクなどです.野良ネコもそうかもしれません.イタチやクジャクが小動物に悪影響を及ぼしている可能性は県内各地で指摘されています.とはいえ,ミヤコカナヘビについては,具体的な調査の結果に基づいて言われているわけではありません.

3)農薬の影響

 畑で使われる農薬のほか,除草剤の散布も,草むらに棲むミヤコカナヘビに悪影響を与えている可能性があります.とはいえ,調査・研究がなされていない点は2と一緒です.

4)ペット用の販売を目的とした採集

 ミヤコカナヘビは爬虫類愛好家の間で人気があるようで,売買もされています.他のカナヘビとセットで飼育される場合もあると聞きます.飼育には,動物を身近に感じたり,より深く知ったりするという利点もありますが,商業目的の乱獲を招き,野生集団が圧迫される一因にもなります.そもそも,ミヤコカナヘビは宮古島市自然環境保全条例により採集が禁止されています.


このように幾つかの要因が考えられていますが,ミヤコカナヘビ減少の主原因はよく分かっていません.それを知るために,とにかく調査・研究が必要です.その第一歩として,まずは,ミヤコカナヘビどんなところにどれくらいいるのか,現状を把握することが急務です.

 

【ミヤコカナヘビの情報を提供して下さい!】

以上の理由から,ミヤコカナヘビの情報の提供を呼びかけています.それらしいトカゲを見かけた人は情報をお寄せ下さい.

必要な事項は次の2つです.


① いつ見たか(何月頃? 今年/○○年ほど前?)


② どこで見たか(可能なかぎり、番地やGPS [緯度経度] を教えて下さい)
(写真もあると確認に役立ちます.できればトカゲと目撃地点の様子を写メして下さい)

 電話:0980-77-4947(宮古島市教育委員会)
 

   mail: miyakokanahebi(a)gmail.com(琉球大学 戸田・才木宛て)

 


※ ミヤコカナヘビは宮古島市自然環境保全条例により採集が禁止されています

 

【なぜ一般の方々の協力が必要か? 】

通常,希少動植物の調査は専門家が行います.ではなぜ,ミヤコカナヘビに関して一般の方々に情報提供をお願いするのでしょう? それは,このトカゲの特性のためです.カナヘビの主な生息地は山林ではなく「草むら」です.実際に,民家の庭の生け垣や,集落のなかのちょっとした空き地でも見つかることがあります.一方,あまりにも数が減ってしまったために,野外調査の経験が豊富な専門家2-3人で1日中探し回っても,見つかるのは0~2匹という感じです.こうなると,種全体の生息状況を把握するのは山林に棲む種よりも難しく,専門家による調査にも限界があります.そこで,一般の皆さんにも協力していただき,実態把握を目指そうというわけです.

 

【寄せられた情報は何に使う? 】

寄せられた情報をもとに,まずは,確認地点を地図上にプロットします.また,一部追加調査を行い,分布図を作成します.次に,その分布図に環境情報を重ね合わせ,どういう条件のところにカナヘビがいるのかを分析します.その分析を通して,例えば,「カナヘビの生息には最低限これくらいの緑地が必要」とか「この規模の道路があるとカナヘビは行き来できない」といったことを明らかにしたいと考えています.

これは,住民の方々(来訪者も?)総出の動物調査です.ですから,本当は,寄せられた情報を逐次皆さんに開示し,共有したいです.そのほうが,興味を持った人も「おお,あそこにもカナヘビがいたのか.じゃあ,ここはどうだろう.」みたいに盛り上がれるに違いありません.しかし,残念ながらそれはできません.ペット用の販売を目的に違法採集する人達がいるからです.分布の詳細は伏せたまま,分析を通して明らかになったことを新聞やテレビなどの報道,このホームページなどを通じてご報告したいと思います.どうか,ご協力下さい.

 

【参考文献】

このサイトの作成にあたり,次の文献を参照しました.

 

● Lin, S.-M., C. A. Chen, and K.-Y. Lue. 2002. Molecular phylogeny and biogeography of the grass lizards genus Takydromus (Reptilia: Lacertidae) of East Asia. Molecular Phylogenetics and Evolution 22: 276–288.

●  Lue, K,-Y., and S.-M. Lin. 2008. Two new cryptic species of Takydromus (Squamata: Lacertidae) from Taiwan. Herpetologica 64: 379–395.

● 前之園唯史・戸田守.2007.琉球列島における両生類および陸生爬虫類の分布.Akamata (18): 28–46.

● 持田浩治・竹中践・ 戸田守 .2013.カナヘビ類が日中に利用している微生息環境. Akamata (24): 13-16.

● 持田浩治・竹中践・ 戸田守 .2013.ミヤコカナヘビの孵化幼体サイズの一例報告. Akamata (24): 29–31.

● 饒平名里美・当山昌直・安川雄一郎・陳賜隆・高橋健・久貝勝盛.1998.宮古諸島における陸生爬虫両生類の分布について.平良市総合博物館紀要 (5): 23–38.

●  Ota, H., M. Honda, S.-L. Chen, T. Hikida, S. Panha, H.-S. Oh, and M. Matsui. 2002. Phylogenetic relationships, taxonomy, character evolution and biogeography of the lacertid lizards of the genus Takydromus (Reptilia: Squamata): A molecular perspective. Biological Journal of the Linnean Society 76: 493–509.

●  Takeda, N. and H. Ota. 1996. Description of a new species of Takydromus from the Ryukyu Archipelago, Japan, and a taxonomic redefinition of T. smaragdinus Boulenger 1887 (Reptilia: Lacertidae). Herpetologica 52: 77–88.

● 竹中践.1996.カナヘビ類.p. 78–79. 千石正一・疋田努・松井正文・仲谷一宏(編)日本動物大百科5両生類・爬虫類・軟骨魚類.平凡社,東京.

● 竹中践.2014.ミヤコカナヘビ.p. 6–7. 環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室(編)レッドデータブック2014—日本の絶滅のおそれのある野生生物3爬虫類・両生類.ぎょうせい,東京.

● 田中聡・嵩原健二.2003.先島諸島における野生化したインドクジャクの分布と現状について.沖縄県立博物館紀要 29: 19–24.

● 当山昌直・疋田努.トカゲ類の交尾写真三例.両生爬虫類愛好会誌 (4): 13–14.


【さらに知りたい人へ】

東海大学生物学部生物学科(札幌)の竹中践教授は長年カナヘビ研究に取り組んで来られた,日本のカナヘビ研究の第一人者です.私たちもお世話になっています.竹中博士の研究室のHPにもカナヘビの情報がありますので,興味のある人は訪ねてください.

アドレス http://members3.jcom.home.ne.jp/takydromus-sp/


宮古島市教育委員会に協力をお願いし,近日中に公共電波を使っての広報もする予定です.