2:ミヤコカナヘビ目撃情報の提供の呼びかけ~テレビを見てくださった方からの応援

 

去年の春,まだ国内希少野生動植物種になる前のミヤコカナヘビ調査でのことです(ミヤコカナヘビの詳しい情報については,同ホームページ内の項目「ミヤコカナヘビHP」をご参照下さい).ミヤコカナヘビはそうとう個体数が少ないと考えられ,既知の生息地でも1度の調査で複数の個体を観察できることは滅多にありませんでした.そんななか,確実な生息地が数地点しか把握できていないという現状を打開するために,島民や来島者の方々が見たという情報も集めたいということで,島内各地の公共・商業施設に「目撃情報を寄せてください!」という旨のポスターを掲示してもらったり,宮古島市の地方新聞で取り扱ってもらったりして呼びかけました.そのなかの1つに,行政チャンネルという宮古島市が提供しているテレビ番組があります.2015年5月中旬に収録を終え,6月から市内で放映され始めました.

それに先立ち,2015年4月,1度に2個体以上観察できる調査地が見つかりました.そこでは7月にも3個体観察することができました.このように複数の個体を安定して観察できるような生息地は当時,他にはありませんでした.繰り返し観察ができるのであれば,新しい生態学的知見を得られるかもしれないという動機から,継続して調査を行う計画を立て,宮古島に行く度に必ず1日は日の出前から日没まで毎時センサスを行うことになりました.調査地の一部に畑が含まれていましたが,行政の方に相談しても土地所有者の特定は難しかったため,所有者の方には直接お会いできた機会に挨拶しようと思い,さっそく調査を始めました.調査地にあった草むらは,台風や草刈りによる多少の撹乱はありましたが,その状態が回復するのに時間がかかりそうな大規模の撹乱は,しばらくの間ありませんでした.

 さて,気温の低下とともにカナヘビの活動も低下すると思われる1月のことです.調査地に行って衝撃を受けました.道路脇の草むらがなくなっている….土地の整備のためでしょうか,カナヘビの生息環境である草むらの広い範囲が失われていました.一縷の望みをかけて,畑の中を1時間ごとにセンサス調査していた時のことです.「ガガガがががががっ」いきなり大音量で大型の収穫機が入ってきました.驚く農家の方と私.相手の反応を伺いながら,話しかける私「あの,すみません.琉球大学で宮古島のカナヘビを調査し…(名刺を出して挨拶しようとする)」.農家のおじい(以下おじい)「ねえね.どっかで見たことあるよ.テレビに出てなかったか?」.そうでした.私もすっかり忘れていたのですが,宮古島の行政チャンネルに戸田先生と出演させていただく機会がありました.先ほどの比ではないくらいの衝撃を受けた私.言おうと思っていたことはすべて頭から吹っ飛んでいきました.そう,まるで,学会デビュー戦で口頭発表した後の,質疑を投げかけられた時のように.恥ずかしいやら,それでも何か言わなきゃと,混乱してアワアワすることしかできませんでした.
 おじい「なんね.トカゲ探してるのか?」.私「そうなんです.それで,この畑を調査させてもらいたいのですが,いいですか?」.おじい「いいよ.じっくり見てって.でも,重機が入るときは外に出ててね.危ないから.」挨拶が遅れた旨も,謝ろうと思っていたのですが,台詞の上に被せられてしまいました.まあいいか,許可はもらえたし.優しいおじいでよかった.
畑から途中退場し,おじいの作業が終わるのを外で待つ私.しばらくして,作業を終えたおじいが外に出てくる.「ねえね.テレビ見てるよ.ちばりよ(がんばれよ)~」と言い残して,また別の畑へ向かうおじい.実はこの行政チャンネル,新しい収録がない限り,同じ放送内容のものが繰り返し放送され続けます.正直,直接見られていることを言われるのは超絶恥ずかしい.混乱していた私は,探していたのが“ただのトカゲ”ではなく,ミヤコカナヘビであることを訂正できませんでした.それでも,テレビを見て,応援していただけたことには感謝です.

 2016年8月現在,テレビやポスター,新聞記事を見てくださった方々から提供していただいた目撃情報は当初の予想を上回り,ン十地点に及んでいます.「テレビ見たよ」は恥ずかしかったけれど,おかげさまで,ミヤコカナヘビの生息状況に関する理解は飛躍的に進みました.情報を提供してくださった住民の方々,テレビや新聞をはじめ広報に協力してくださった方々,ほんとうに有り難うございます.そして,引き続き,情報提供をお願いします(M.S.).